夢のこびと/Dreaming dwarf
Copyright (C) 1998 Sanae Oda

朝から、せみ時雨がにぎやかです。 雲の上の雷様の耳元にも届きました。
寒がりの雷様は冬の間はお布団に包まってぬくぬくと眠って過ごします。
ゆっくりと眼を覚ますと、おもいっきりあくびをしながら、立ち上がり、冷たいシャワーを浴びます。
歯磨きをして、新しいトラ模様のパンツをはきました。そして、よいしょっと、5つの小さな太鼓を背負いました。
しばらく食事をしていなかったので、お腹がペコペコです。ゴロゴロとお腹が鳴ります。
今年はおいしい「おへそ」をいっぱいたべよう!と、雲の下を覗きました。 雲の下はキラキラと輝いています。

海は真っ青です。船がのんびりと航海しています。 はだけた山肌や砂漠の黄土色が眼下いっぱいに広がっています。
山の緑は深く、山々の雪は真っ白です。畑の作物は豊かに育っています。 1本の道路がどこまでも続いています。
クルマが走っています。家々が小さく見えます。
人間の姿はあまりのも小さいのですが、雷様には人間の居場所がわかるのです。
雷様の好物は「おへそ」なんです。人間の「おへそ」は、やわらかくて、甘くて、大きいのです。
雷様はゴロゴロ、ゴロゴロとお腹を鳴らしながら、雲から体を乗り出して、人間の「おへそ」をさがしています。

おいしそうな「おへそ」が見つかりました!太鼓を鳴らしながら、大喜びで、ぐんぐんと乗っている雲を飛ばします。
雷様は、にっこりしながら、ぴかっぴかっと釣り糸を光らせて、さっと器用に釣り上げてしまいました。
ゆっくりゆっくりと味わいました。おいしかったので、雷様はとても満足です。乗っている雲の色が白くなりました。

けれど、雷様がどんなにお腹を空かせていても、全ての人間の「おへそ」は食べられないのです。
雷様が鳴らす、小さな太鼓の音が聞こえる人には、「おへそ」を隠されてしまうからです。
雷様の大喜びの太鼓の音は、誰にでも、いつでも聞こえるのかしら?いいえ。
立ち止まって、じっと静かに、耳を澄ませている人にだけ聞こえるのです。
雷様には、太鼓の音が聞こえていない人が、はっきり見えます。
そんな人を見つけると、うれしそうに太鼓を鳴らしながら、
ゴロゴロ、ゴロゴロ、ドドンとお腹を鳴らして、釣り糸の準備をします。

お風呂上りのぶーちゃんは、はだかのままです。遠くに、雷様の乗った黒い雲が見えます。
今日のぶーちゃんには、大喜びの雷様の太鼓の音が聞こえるのかしら?
ぶーちゃん、思い当たることがあったら、早く謝ってしまいましょ、ね。

雷様に食べられてしまった「おへそ」は、どうなるのかしら?
あのね、「でべそ」になってしまうのです。恥ずかしいので、洋服に隠れています。