DECEMBER
Copyright (C) 1997 Jun Nishio
1

「ケロッ、ケロッ」「けろっけろっ」静まり返った夜、響くように、かえるさんの声が聞こえてきます。
ぶーちゃんには、かえるさんの言葉がわかります。
かえるさんは、今日のできごとや気分などを、思い出しながら、ぶーちゃんにお話をします。
ぶーちゃんは、かえるさんの言葉はわかりますが、かえるさんの言葉が話せません。
じっと聞いています。かえるさんには、ぶーちゃんが見えません。
ぶーちゃんの言葉はわかります。
いつの頃からでしょうか?ぶーちゃんとかえるさんがお話をするようになったのは?
ぶーちゃんにも良くわかりません。なんとなく、いつのまにか、そうなったのです。なんとなく、わかるようになったのです。かえるさんのことが。かえるさんは、どうでしょうか?
おなじように、なんとなくわかるようになったのでしょうか?
ぶーちゃんは、ただ、聞いています。
静かな中で、かえるさんの声と飛ぶときの水音が聞こえます。
今日のかえるさんは、困っています。すこし、寒いからです。風邪をひきそうです。
今日のかえるさんは、さびしそうです。お友達とけんかをしてしまったようです。
今日のかえるさんは、怒っています。仲直りができなかったようです。
今日のかえるさんは、楽しそうです。小雨が降っているからです。
お背中に雨粒がつるつるとすべるのが、くすぐったいのです。
くっくっくっと、笑っているようです。
今日のかえるさんは、楽しそうです。かえるさんの乗っている葉っぱや、周りの水面がきらきら輝いているのです。とても、綺麗です。あまりの輝きにかえるさんは、しばし眼をつぶりました。
かえるさんには、ぶーちゃんが、お話を聞いていてくれるのがわかります。ぶーちゃんが、うなずいているのもわかります。うれしそうなのもわかります。ぶーちゃんが、あきているときもわかります。退屈しているときもわかります。でも、かえるさんはおしゃべりを止めません。
ぶーちゃんが聞いてくれるからです。
昼間、かえるさんが、うとうとしていると、ぶーちゃんの声が聞こえます。
きゃーきゃー、おおさわぎのときもあれば、ぼそぼそとお話をするときもあります。
ぶーちゃんが、泣いているときもあります。お話をしないでじっとしているときもあります。

お昼間の太陽は真っ白で、とてもまぶしく、二人は目を細めます。
夜の月は真っ白で、とても澄んでいて、二人はうっとり見とれます。
二人の心は穏やかです。

 

おはなし2